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Archetype12

ReLow60 次期モデルのセンサー選定用テスト基板。12キーに6種のセンサーを並べ、採用型番を実測で決める。販売予定なし。

Archetype12

概要

Archetype12 は、ReLow60 の次期モデル(US / Split / JP と ReOrtho60)に載せるセンサーを決めるためのテスト基板です。 9キーだった Archetype09 の後継で、名前の数字はそのままキー数(12キー)を表しています。

Archetype09 では「ロープロファイル磁気スイッチのキーボードが作れるか」を確かめました。今回は製品に載せるセンサーをどれにするかを、カタログ値ではなく同じ基板・同じスイッチ・同じ条件の実測で決めるのが目的です。

この基板は3つの役割を兼ねています。

  1. センサー評価 — 6種のセンサーを1枚に並べ、感度・リニアリティ・ノイズ・温度ドリフトを横並びで比較する
  2. プレート-PCB 間隔の最適化 — スペーサーの厚みを振って、磁束とスイッチ保持の両立点を実測で決める
  3. ケース構造の検証 — プレート+スペーサー+PCB を締結する「コアアセンブリ」が、そのまま次期モデルの FSU(Fixed Sensing Unit) の原型になる

テスト基板のため販売予定はありません。設計から測定までの過程は、Archetype09 と同じく技術記録として公開していきます。 2026年9月上旬に基板・プレート・スペーサーを発注し、現在は実装待ちです。

主要スペック

項目内容
キー数12(縦3 × 横4、19.05mm ピッチ)
基板100 × 86.6mm・角丸 R3・厚さ 1.2mm・4層(JLCPCB)
層構成F.Cu / In1 = GND / In2 = +3.3VA / B.Cu — ReLow60 の量産基板と同じスタックアップ
実装面センサーを含む全部品が裏面(B.Cu)片面実装。表面はスイッチと取付穴のみ
MCUAT32F405RCT7(Archetype09 と同じ。測定ファームウェアが無改造で動く)
MUX / ADCSN74LV4051A × 2 → PA1 / PA2(12bit ADC)
センサーSOT-23 × 6、X2SON-4 × 6(下表)
プレート / スペーサーFR4、100 × 66mm。スペーサーは 0.8 / 1.0 / 1.2mm の3種類
締結M2 × 12。4キーが集まる交点にも穴を置き、間隔を効かせたいキーの近くで締結できる
デバッグSWD / UART / I2C ヘッダ、テストポイント(GND・+3.3V・+3.3VA・+5V・MUX 出力)
表示I2C 接続の OLED に各キーの生値・一覧・温度を表示するテスター用画面(実機未検証)
主対象スイッチストローク 1.5mm(Limited Alpha の購入者はほぼ全員がこれを選択)
表面。12個のスイッチの下に、それぞれ違うセンサーが載る。シルクにセンサー名を印刷している
表面。12個のスイッチの下に、それぞれ違うセンサーが載る。シルクにセンサー名を印刷している
裏面。センサー・MUX・MCU・電源をすべて片面に集めた。左下が SWD / UART / I2C、下端が USB-C
裏面。センサー・MUX・MCU・電源をすべて片面に集めた。左下が SWD / UART / I2C、下端が USB-C

評価するセンサー

スロット配置。左2列は SOT-23、右2列は X2SON。ライムの枠が次期モデルの採用候補
スロット配置。左2列は SOT-23、右2列は X2SON。ライムの枠が次期モデルの採用候補
フットプリント型番役割
SOT-23MT9102ET2現行(Limited Alpha で採用)。比較の基準
SOT-23DRV5056A32本命候補。感度が現行の約1.9倍で、磁石の温度補償を内蔵する
SOT-23TMR2617S-AAC2TMR(トンネル磁気抵抗)センサー。感度は現行の2〜2.8倍。ヒステリシスの実測が関門
X2SON-4TMAG5253 BA32バイポーラの対照サンプル。X2SON 手実装の練習も兼ねる
X2SON-4TMAG5253 UA52高感度品。入手でき次第、空き枠に後載せ
X2SON-4TMAG5253 UA22UA5 と同一ダイのゲイン違い。極性検証と外挿の基準

次期モデルの採用候補は MT9102ET 継続 / DRV5056A3 / TMR2617S の3つに絞れています。 この3つはどれも SOT-23 で 1=VCC / 2=OUT / 3=GND のピン配置が一致するため、同じパッドに直載せして比べられます。逆に言うと、現行の量産フットプリントにそのまま載せ替えられるということでもあります。

判断軸は分解能・温度耐性・コストの3つだけです。バイポーラのホールセンサーは MT9102ET で既に物理的な上限に近く、それ以上を狙うなら片極性(ユニポーラ)か TMR しか道がない、というのが現時点の見立てです。

設計のポイント

4層にした理由はスタックアップ

センサーが読む磁束は、内層の銅を通ってセンサーに届きます。層構成が違うと、ここで測った数値が量産基板と対応しなくなります。 そのため Archetype12 は ReLow60 量産基板の実物と同じ4層・同じ層割り当てにしました。2層にすれば安くなりますが、それではこの基板の目的が壊れます。

全部品を裏面に集める

表面はスイッチと取付穴だけにして、センサー・MUX・MCU・電源を全部裏面に置きました。 センサーを裏面に置くのは ReLow60 と同じで、磁石とセンサーの距離を基板厚(1.2mm)で決めるためです。MUX は担当する列の真下に置き、12本のアナログ配線を最短にしています。

回路は「構成マップ」から起こす

Archetype12 は Archetype09 の回路をそのままコピーせず、全結線と設計判断をまとめた「構成マップ」を先に書き、そこから回路を起こしました。 ERC は0件、ネットリストは構成マップと機械照合して全一致を確認しています。KiCad のライブラリテーブルもプロジェクトに同梱し、クローンすれば他の人の環境でもそのまま開けるようにしました。

測定計画

測定は2つの群に分けます。混載基板だと「隣のセンサーの発熱が干渉するのでは」「加熱が不均一になるのでは」という懸念が出ますが、群の切り方でこれを避けています。

内容方法
電気特性極性・感度・リニアリティ・ノイズ・カバー率・実効分解能室温で測る。隣接干渉や加熱と無関係なので混載1枚でよい
自己発熱個別測定は不要。現行 MT9102ET(6mA)で5時間 soak して最大 4 LSB=非問題と実測済み。消費電流が同等以下の他型番も同じ結論になる
環境温度型番ごとの LSB/°C(ゼロ点ドリフト、磁石温度補償の効き)基板全体を均一に加熱する。ホットプレートで一次確認し、環境試験装置で本測定。熱電対は加熱器ではなくモニタとして1点貼る

必ず底打ちまで押した状態を測ります。Archetype09 では部分ストロークだけ測って飽和を見逃したので、同じことを繰り返さないためです。

これから

  1. 基板・プレート・スペーサーの到着後、ホットプレートで実装(表面に部品が無いのでステンシルは裏面1枚)
  2. 群1(電気特性)→ 群2(環境温度)の順に測定
  3. スペーサー 0.8 / 1.0 / 1.2mm で間隔と磁束・保持の関係を実測
  4. 結果をもとに次期モデルのセンサーとスペーサー厚を確定

結果はこのページに追記するか、別の記事にまとめます。

まとめ

Archetype09 が「作れるか」を確かめる基板だったのに対し、Archetype12 は「何を載せるか」を決める基板です。 販売はしませんが、イベントに出店する際は展示する予定です。OLED で各キーの読み値が見えるので、センサーごとの違いを触って比べられます。

裏面には、支援いただいている TiB FAB と、私が大学で所属する reRo のロゴを入れています。環境温度の本測定は TiB の環境試験装置をお借りして行う予定です。